年式によって異なるかもしれませんが、’55 Type-1 のドアヒンジのネジ頭は プラス4番 が使われていました。サイドドアを脱着する際には インパクト工具 が必要です。すり鉢状に加工されたヒンジプレートにカウンターシャンクで留まっているため、通常のドライバーでは まず外せません。また使用するビットも 必ず合った番手にしないと ネジ頭をナメてしまいます。
取り外したドアパネルは まず最初に サンドブラスト (持っていません) ならぬ ウォーターブラスト しておきます。汚れを取るのが目的ですが 水の勢いを強くすれば 浮サビ 程度なら洗い流してくれます。もちろん すぐにエアーブローして 太陽光で乾燥させないと、地金むき出しの箇所は すぐにサビてきます。左サイドドアの亀裂を内側から見た画像です。薄っすらですが広範囲にサビが発生していました。パネルに挟まれて 袋状 になっているため、せいぜい 細めのワイヤーブラシ が届く程度の場所です。まずは ドアパネルの隅々に サビキラー を塗布しておき、患部を溶接した後に POR15 をトップコーティング する作戦で進めます。
左サイドドアの亀裂に関しては 案外とパネルの肉厚があったので、半自動溶接で塞がりました。しかし隣のサビ穴は、溶接でアークさせると 金魚すくいのポイ 状態で どんどん広がるだけでした。。半自動溶接を駆使すれば塞げないこともない大きさですが、できるだけ 溶接による焼き を入れるのは最小限にとどめたいところです。
画像では 何がどうなっているのか わかりづらいですが、ハケの柄先に1cm四方の鋼板 を両面テープで貼り付けています。これを 薄くなったドアパネルの裏側へ押しつけて 当て板 (裏パッチ) 溶接 と呼ばれる工法を使います。
裏から当て板を押し当てて 表から溶接することで、点付け溶接くらいの大きさでサビ穴が塞がりました。当て板は 地金まで削り さらに通電させるため しっかり密着させないと 溶接棒がアークできずに失敗します。
裏側から見た画像です。最小限の溶接焼けで亀裂と穴を塞ぐことができました。周囲に斑点状に見えているのは サビキラー が サビに反応している模様です。溶接跡とあわせてこれら周辺は POR15 でトップコーティングします。
これは 前回レストアでは 手付かずのまま 放置してしまっていた ドアガラスのチャネルを固定するためのパーツです。無くてもガラスの上下はできたため、いつかやろう で20数年経ってしまいました(汗)。折れたネジはドリルで揉み取って、おそらく 昭和40年代 に補修されたのであろう 錆びたステー金具は 新たに作り直しました。
’55 Type-1 のドアガラスチャネルは 上下に貫通しているタイプです。このあたりの構造は 年式によってマイナーチェンジが頻繁に行われています。色の違う下部の金具が 前回レストアで 見なかった事 にされていた部品です。。しかし とても重要なパーツであることが判明します。
テコの原理によって比較的スムースに感じるだけで、ドアガラスの上下には かなりのチカラが掛かります。さらにドアパネル自体に 開閉時の衝撃が加わります。それらが長年積み重なったことで 曲がり や 歪み や 亀裂 が生じていたようです。助手席側よりも運転席側の方がダメージが大きい事も その推測を裏付けしています。
チャネルの下部が固定されていなかったことで ドアパネル内側とも接触していたようですが、歪んでしまったチャネルのステーは リードバイス(万力) で修正して さらに 忘れられていた部品 を取付けたことで、ドアパネルとの接触事故は起きなくなりました。と、安心していたのも束の間。。
右サイドドアを外すまで気が付きませんでしたが、ドアガラスのチャネルステーを支える辺りに見える亀裂は 完全に破断 しており、指でさわるとフニャフニャしていました。歪み も亀裂が原因で生じたのでしょう。ここまでくると ドアガラス上下による負荷の問題だけでなく、構造上の欠陥があるのかと思えてきました。。ドアパネルの内部構造が頻繁にマイナーチェンジされていくのは こういった不具合を修正するためでもあったでしょう。
単に亀裂を溶接するだけでは またドアガラス上下のチカラ に負けて同じ事の繰り返しになるので、リードバイスで真っ直ぐに 矯正した丸針金 で補強しておきます。丸針金を使う理由は 溶接がしやすいためです。溶接後に 遮錆塗料を浸透させやすいという利点もあります。
点付け溶接で位置を決めた段階ですが さらに その点と点を紡ぐように接合していき 反対側からも溶接しました。あらためて見ると 破断した箇所は 負荷が集中する場所なのに幅が狭すぎ です。この作業によって今度は 針金が途切れたあたりに負荷が掛かることになりますが、充分なパネルの広さがあるので問題ないでしょう。
三角窓周辺は 右サイドドアのほうが 大きな穴が空いています。運転席側なので ドアガラスの上下 や ドアの開閉 が頻繁にあることが 助手席側よりもダメージが大きくなった要因なのは間違いないです。
左サイドドアと同様に 当て板 (裏パッチ) 溶接 を用います。ハケを押し付けて固定しておく必要があるので 鈑金で使う 当て盤 を重しにしています。
点付け溶接で ハケの押し付けが不要になれば 今度は 平タガネ や ハンマー を駆使して ドアパネル側に沿わせて 密着させた状態にして さらに溶接していきます。
比較的に大きな穴でしたが、裏パッチ溶接 をする事で 大規模な切開手術をすることなく修繕することができました。あと どんな溶接をした場合でもそうですが、溶接跡が一番サビやすい ので、入念に 遮錆処理(今回だとPOR15)を施しておきます。
右サイドドアは 下辺が左右ともに腐り始めていました。前回レストアで POR15 は塗布していましたが すでに鉄板内部までサビが侵食していた事で 防ぎきれなかったようです。今回は これ以上 赤サビ を増殖させないためにも サビキラー で下地処理しています。
右サイドドア下うしろ側 パネル切り接ぎ の手順です。この後は POR15 を塗布して 溶接ビード跡 にパテを盛って サフして 上塗りです。
右サイドドア下前側は、縦・横・側面 が腐っていましたので、より立体的な補修が必要でした。
1枚貼った後に パッチ当て溶接 で もう1枚 内側から貼り付けておきました。この後は POR15 を念入りに流し込んで固めておきます。
ドアパネルは取付けた状態で塗装しますので、この段階で チリ合わせ を完了させておきます。
前後左右・奥行き・開き具合 などを全体的に見ながら、ドアヒンジ と ドアストライカープレート の位置を微調整していきます。納得のいく状態になれば、本締めを行いますが、手締めでは トルクが足りずに徐々に緩んできてしまうので 必ず インパクト工具 を使って増し締めします。